元はただの石ころ

「確かなのは過去でも未来でもなく今」とわかっているけれど、そう簡単に割り切れない奴の日常

【読書感想文】『装丁を語る。』(鈴木成一)

 

 

装丁を語る。

装丁を語る。

 

装丁家の鈴木成一さんが手がけた本の紹介

装丁家の鈴木成一さんによる自らが手がけた装丁の中から120冊を厳選して紹介しています。著者初の単著ということですが、紹介されている本はこれまで雑誌でのインタビュー記事に使用されたものが多い印象を受けました。既に読んだことのある内容がいくつかあり、そこは少し残念でした。でも、相当に忙しい著者ですから、それも仕方ないのかなと思います。

 

著者の語り口がとても良いです。饒舌ではないのですが、どこか温かみがある。個人的には文末に「(笑)」を時折使用していたのが意外でした。

 

本の個性をいかに表現してあげるか

著者は装丁について「本の個性をいかに表現してあげるか」と書いています。カバー、表紙、文字詰めなどをとおして、その本がなりたがっている形にしてあげるというのです。そして、その形というのは、著者自身が「わくわくできるもの」でなくてはいけないとも言っています。この本を読むと著者が本当にバラエティ溢れる様々な本の装丁をしてきたということがわかるのですが、なぜこんなに様々なジャンルの本の装丁をできるのだろうかと思っていました。それは、著者が本に対して真摯に向き合って、その本のなりたがっている形を読み取る力があるからなのだと気づきました。

 

装丁をするためには、次の3点が不可欠だと学びました。

1. 本を読み込んでその本のなりたがっている声に耳を傾けること
2. その本のなりたがっている形をどのように表現するのか(写真なのか、イラストなのか、印刷はどうするか等)について十分な知識があり、実現できること
3. 自分がわくわくできるものにすること

 

なお、本書は「装丁について知らなくても、本(特に小説)を読むことが好きな人」にはお勧めです。全ページカラーで、これまで手がけた本をシンプルに紹介してあります。あ、この本読んだことある!見たことある!と、きっと驚くと思います。