元はただの石ころ

「確かなのは過去でも未来でもなく今」とわかっているけれど、そう簡単に割り切れない奴の日常

【映画感想文】ディア・ドクター

この映画を見て僕が思ったことは、以下の2つです。

 

  • 医者とは何か
  • 白でも黒でもない領域

それぞれについて書いていきたいと思います。

*ネタバレしていますので、未見の方はご注意願います。

 

 

医者とは何か

小さいころ、あれは小学校低学年だった頃。

世界中の人が幸せになればいいと思っていた。思っていただけなんだけど、わりと本気だった。

 

では、どうすれば世界中の人たちが幸せになれるのか?それは最低限、争いのない世の中でなくてはならない。

ある日、テレビを見ていると、アフリカの子どもたちが映った。彼らは、飢えてやせ細っていた。彼らを救うには、その貧しい状況を改善しなくてはならない。では、それを改善するためにはどうすればいいのか。彼らはなぜそもそもそんなにも貧しい生活をしているのか。それは、その国で戦争が起こっていたからだった。

戦争をなくすことは難しい。しかも日本ではない。外国で起こっていることだ。何もできない。僕は無力感に苛まされた。

 

でも。

 

医者であれば、彼らを救うことができる(貧困からの脱却については別の対策があるとして)。戦争で傷ついた人たちを、苦しんでいる人たちを助けることができる。これは、誰にでもできることではない。医学の知識を持ち、それを実践できる力が無くてはならない。つまり医者とは医学の知識を持ち、それを実践できる力がある人」のことだ。

 

白でも黒でもない領域

主人公の医者は、長年、過疎化が進んだ高齢者が多い村にて診察をしてきた。けれど、実は、彼は医師免許を持っていなかった。それが明るみに出て、ある日、彼はカブに乗って逃走する。

法律的に見たら彼は犯罪者だ。その意味で、彼は黒である。

 

でも、彼がその村にいた間、彼が診察してきた村の人達は、彼がいたことで、平穏を保ってきた。彼は医師免許を持っていないものの、独学で勉強をし、患者を救おうとしてきた。その意味では、白でもあると思う。

 

黒か白か。どちらか一方だとは思えない。もちろん無免許で医師行為をする事が、実際にあってはならないのは確かだ。だから、警察に捕まるのは当然だと思う。でも、だからといって、主人公の彼は完全なる悪者なのだろうか。僕には、どうしてもそうは思えないのだ。

 

彼が患者に接する時、彼は確かに、その患者の苦痛を取り除きたいと思っていたはずだ。もちろん思うことなら誰だってできる。技術が伴っていなければ話にならない。それもわかっている。それでも、僕は、彼のその患者を救いたいという気持ちを無視する気持ちにはなれない。

 

医者としては失格でも、彼の「人を救いたい」という気持ち自体は決して黒ではない。

 

見終わって後味が良い内容ではないと思う。でも、とても考えさせられる良い映画だった。

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