元はただの石ころ

「確かなのは過去でも未来でもなく今」とわかっているけれど、そう簡単に割り切れない奴の日常

【読書感想文】『ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶』(大崎善生)

人は出会い、そして別れる。

 

結局はその繰り返しなのだ。

限られた生の中で、沢山の人と出会い、そして別れていく。

 

誰かを好きになる。その他者と自分との距離が限りなく近づく。けれど、些細なことからすれ違い、その他者は自分の前から消えていく。時が経てば経つほどその距離は膨大になるが、その他者との思い出は自分の心にいつまでも残される。それは、ふとした瞬間に朧気であったり、またはっきりと姿を見せつけてくる。

 

この小説は、人を愛することについて書かれている。4つの短編集であるが、ストーリーに関連性は無いものの共通したキーワードがあり、それが全ての短編に貫かれている所が素晴らしい。

 

余談だが、「キャトルセプタンブル」という短編は、同著者の別の作品「九月の四分の一」と関連性があるため、そちらの作品も読んでおくと更に楽しめる。

 

「九月の四分の一」の感想はこちら。

motoishirei.hatenablog.com

 

 

ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶 (新潮文庫)

ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶 (新潮文庫)