【読書感想文】『スカイ・クロラ』(森博嗣)
小さいころ、空を飛びたいと思っていた。
ドラえもんのタケコプターで本気で飛べるなんて思っていなかったけれど、空を見上げながら自由に飛び回れたらどんなにか素晴らしいだろうと思った。小さいころから、割と物事を色々と考えて悩む性質であった僕は、空の先にある(と思っていた)自由にたまらなく憧れを抱いていた。
大学生になり、僕はニュージーランドに留学していた際に、パラグライディングを経験した。パラグライディングは、小さころに夢見ていた空を飛んでいる感じがした。小高い丘から全力で走り、ふわりと浮いてからは、驚くべきほどの静寂、サイレンスに包まれた。ああ、空の上ってこんなにも静かでこんなにも居心地がいいんだと僕は思った。なんで今まで、パラグライディングをやらなかったのかと後悔したほどだ。その後、また飛びたいとは思っているけれど、準備や費用のことを考えると、躊躇してしまいそのまま今に至っている。
この小説は、戦闘機に乗る子どもたちの話。
シリーズ化されているが、発売当時、時系列にそっては発売されなかった。
『スカイ・クロラ』は、刊行順では最初だが、作中の時系列では最後にあたる内容であり、時系列順に並べると『ナ・バ・テア』、『ダウン・ツ・ヘヴン』、『フラッタ・リンツ・ライフ』、『クレィドゥ・ザ・スカイ』、『スカイ・クロラ』の順になる。また、文庫版の帯もこの順番でスカイ・クロラシリーズを紹介している。筆者によれば、「第1巻は「ナ・バ・テア」ですので、これから読むのが普通」[1]と言うことだが、「どの巻から読んでも差し支えは無い」[2]とも語っている。
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僕は、『スカイ・クロラ』が発売された当時に買って読んだから、いきなり最終話から読んだことになる。でも、それを感じさせないほどにこの1冊でも十分に楽しめた。この小説の魅力はなんといってもその世界観だ。どうしようもないほどの倦怠感、けだるさ、生きることへの諦観、なによりも冷静な思考とそこから生まれる焦燥感・・・そういったものが、この小説の魅力だろう。
人間は空に憧れてきた。
そして、空を飛ぶためにさまざまなものを作ってきた。
でも、最後には必ず地上に戻ってこなくてはならない。
どんなに空が好きだって、僕たちは天上人にはなれない。その物悲しさ・・・虚無感といったものが、圧倒的な表現力によってダイレクトに読者に伝わってくる。だから、僕はこの作品が好きだ。
押井守監督が映画化したが、映画もストーリーに忠実でよかったと思う。
文庫本もあります。個人的には空が前面に出ていてとてもきれいなハードカバーをおすすめしたいですが、気軽に持ち歩きたい方は文庫本もいいですね。
Kindle版もあります。