元はただの石ころ

「確かなのは過去でも未来でもなく今」とわかっているけれど、そう簡単に割り切れない奴の日常

【映画感想文】奇跡の2000マイル

 

映画の冒頭、以下の言葉が表示される。

 

どこへ行っても居場所のない者がいる

私もそうだった 

ーーロビン・デヴィッドソン

 

もうこれを読んだだけで、この映画は見る価値ありだと感じた。良い映画というのは、もうとにかく冒頭のシーンだけでわかる。映像の雰囲気とBGM。それがピッタリと組み合わさっている映画はそれだけでもう成功だ。

 

この映画は、24歳の女性がオーストラリアの砂漠地帯を約3200kmラクダと犬と共に歩く過程を描いている。しかもこれは実話だ。主人公の女性が書いた『Tracks』という旅行記を基に作成されている。ちなみに、冒頭の言葉はこの主人公の言葉。おそらく『Tracks』に出てくるのだろう。洋書だがいつか読んでみたい。

Tracks

Tracks

 

同じように若者(男性だが)が旅する話で実話を基にしている映画として、「INTO THE WILD」が挙げられる。僕はとにかくこの映画が好きだ。ロードムービーで誰かに「オススメある?」って聞かれたら真っ先にこれを挙げるくらい好きだ。 

 

今回見た「奇跡の2000マイル」は「INTO THE WILD」と同様の映画だし、どちらもロードムービー好きなら絶対見逃せない作品である。

人はなぜ旅に出るのか。2000マイル=3200kmである。それをラクダと犬とで旅をしたのだ。否が応でも「自分と向き合う」事になる。この映画の主人公は過去の記憶と向き合う。向き合いながらも前へ進む。旅の途中、何度か旅を諦めそうになるシーンがある。それでも旅を続けていく。もう無理だと言いながら、それでも前に進んでいく。その原動力は何だったのだろうか。答えはこの映画を見る人に委ねられている。その押し付けがましさが一切ないところがこの映画の魅力だろう。

 

自分のちっぽけさ、自然の偉大さ、ラクダの不細工さと可愛さ、地平線の美しさ、何もないことの素晴らしさ……そういったものがぎゅっと凝縮された素晴らしい映画。

 

ああ、旅に出たい。

自分のことを誰も知らない場所へ行きたい。 

奇跡の2000マイル(字幕版)

奇跡の2000マイル(字幕版)