【読書感想文】『愛をください』(辻仁成)
愛って未だになんだかわからない。人を好きになることと愛することは似ているけれど少し違う。好きの先に愛があるとも限らない。愛されたい、愛したい、そんな言葉は妙に浮いて聞こえる。普段の生活の中に愛という言葉は存在していないかのようで、自分自身、愛という言葉を発した記憶もない。一体、愛って何なんだろう。
手書きの手紙のみでやり取りする若い男女。彼等の間にあるのは愛なのか。それは最後まで自分にはわからなかった。でも愛という言葉に縛られなくても、大切な人を想う気持ち、それはきっと尊く清しい。読み進めるうちに、彼らの手紙の文面にある言葉たちに自分はときに励まされ、心を揺さぶられた。
平凡な毎日を生きられることのしあわせを今一度噛み締めたいと思いながら、本をそっと閉じた。