元はただの石ころ

「確かなのは過去でも未来でもなく今」とわかっているけれど、そう簡単に割り切れない奴の日常

【映画感想文】ラ・ラ・ランド

ミュージカル映画が嫌いな人は、ディズニーランドのエレクトリカルパレードと同じようなものだと思えばいい。

ミュージカル映画は嫌いだ。リアルな世界で突然歌い出す登場人物たちに冷めてしまうから。だから、このラ・ラ・ランドを見るかどうかも随分迷った。でも結果的には見てよかった。というか、この映画を見てそこまでミュージカルが嫌いではなくなった。

 

フィクションを盛り上げるために、歌を歌うのだ。音楽がシーンを盛り上げていく。具体的に音楽がどうだ構成がどうだとこの映画を批評するのは他に素晴らしい解説をしているサイトやブログがあるのでそちらをご覧いただければと思う。

というわけで、以下には僕が思ったことを書いていきたい。※極めて個人的なことなのでラ・ラ・ランドの感想を読みたいという人は他の感想を探して離脱してほしい。以下、一部でネタバレあり。

 

「現実を生きること」と「夢を追いかけること」

この映画を見て、とても良く考えさせられたのが「現実を見て生きるのか、それともやりたいことをやって生きるのか」ということだ。僕はどちらかというと、理想を追いかけて生きたいと思う方だ。しかし現実を考えたときにそれを追求するのは困難である。

2018年11月現在、僕がやりたいことは、極めて怠惰で非生産的なことだ。それは、「小説を読んで暮らしたい」。他人が読んだら「お前は馬鹿か」と率直に突っ込まれると思う。僕も、もしこんな人が知り合いでいたら鼻で笑うと思う。でも、僕がやりたいことは昔から「本を読んで暮らすこと」。これに尽きる。幼い頃から本、特に小説を読んで生きてきた。小説の世界に逃げ込むことで現実の世界を生きてきた。34年間ずっと。

もう正直うんざりすることもある。終わらない仕事。表面的な人間関係。予期せぬ出来事。本の世界はそれがフィクションであれ嘘がない。既に全て決まっている。読み始めれば終りがある。それも数時間で。予定調和なんてつまらないという人がいる。でも予定が決まっていることは素晴らしい。何も決まっていないことで生まれる突然のストレスを考えれば、全てが決まっていた方がよほど穏やかに日々を過ごせる。

僕が理想とする生き方は、今の生き方ではない。今の仕事ではない。仕事の量や時間を減らして自分の時間を作りたい。本を、小説をもっと読みたい。本の世界で暮らしたい。それだけだ。まだ考え始めたばかりだし動くこともほとんどできていない。これから僕の人生がどうなっていくのかまだわからない。でも変えていくのは決めた。半年間、80時間残業を強いられる今の仕事を続けるのは無理だ。

やりたいこと、夢があってもそれを実現させるのは難しい。でも、その周辺部まで視野を広げたときに、やりたいことや夢の片隅にでもそっと携わることができたら、僕はそれは幸せなことだと思う。そういう仕事をしていきたいし、そうやって生きたい。そうすれば夢が叶わなくても現実を選んでもまだ納得できる人生となる気がする。

 

あり得たかもしれない別の人生

ラ・ラ・ランドは、あり得たかもしれない別の人生を最後に一気に見せられる。生きていれば誰しも、「あの時、あの瞬間、別の言葉を言っていたら。別の行動をしていたら」と考えることはあるだろう。人生はIfの連続である。もしも、あの時……ということを考えだしたら切りがない。人生はたくさんのifで成り立っている。映画ではそれが完全なifなのか、実はこちらが本当の人生だったというのか、曖昧に描かれていたように思う。

でも現実的にはパラレルワールドは存在しないわけで、結局、思いを巡らせる事はできても、もう一つの人生を歩むことはできない。当然といえば当然だが、そう考えると人生とは時に非常に無情であり残酷である。一つの選択をしてしまったばかりに雪崩に巻き込まれたかのように人生が悪い方へ転がっていってしまうこともある。もちろんその逆もまた然りなのだし、そもそも悪いか良いかなんてその立場や状況によって感じ方も可変なのだけれど、そういう事を言い始めたらキリがないのでこの辺にしておこう。

 

 というわけで、僕はラ・ラ・ランドを見て自分の人生を振り返ることができた。 

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