元はただの石ころ

「確かなのは過去でも未来でもなく今」とわかっているけれど、そう簡単に割り切れない奴の日常

【読書感想文】『ロング・アフタヌーン』(葉真中 顕)

小説が好きで昔から読んできた。時には死にたくなるような現実から目を逸らすために。生きるために、小説を読んできた。小説を書くのも好きで、昔から細々と書いている。読んでくれる人の人生を変えるような……なんて壮大なものでなくていい。ただ、ほんの少し、読む前と読んだ後で、その人の視点に変化があるような……そんな小説が書けたら良い。

 

葉真中は女性が主人公の小説を書くことが多いけれど、葉真中自身は男性だ。この事実を知った時、軽いショックを受けた。小説家だから性別は関係なく書けるのだろうけれど、女性特有の細かい描写、心の機微を本当に上手く表現している。という自分も男性なので実際のところはどうなのかは女性に聞いてみないとわからないけれど。

 

冒頭の一文「女の午後は長いというけれど、私の午後はいつ始まったのだろう」で一気に引き込まれる。長い午後。ロング・アフタヌーン。なにか元となるものがあるのかと思ってググると、出典不明だがそういう決まり文句があったと葉真中自身が語っている。

 

小説家になりたい人(作家)と売れる小説家を育てたい人(編集者)。書く人と読む人。本は売れなければ、読まれなければ、意味がない。一度でも小説を書きたいと思ったことがある人なら必読。みんな、もっと小説を新刊書店で買おうよ、そう切実に思う。