【読書感想文】『あしたから出版社』(島田潤一郎)
出版社は、大学生の頃の僕にとって憧れの働いてみたい場所だった。けれど自分が名前を知っている大手の出版社は大変な倍率でとても受かるような会社ではなかった。実際に大手の出版社を受けたが全て不採用だった。結局、就職先が決まらない焦りから出版とは関係ない仕事に就いた。
幼い頃から本を読んで生きてきた。生きる合間に本があったのではなく、本があったから生きてきた。書店に行けば自分が読んだことのない本が途方も無いくらいにあった。その中から自分が好きな作家の小説を探しては読んできた。全て読み終えてしまうと他の作家の小説も片っ端から読んでいった。特に友人が一人もいなかった中学から高校生の頃、正に本が僕の生きる希望だった。
この本は、たった一人で出版社を立ち上げた人が書いている。彼の名は島田潤一郎。けれども最初は出版社をやりたいという想いから始めたのではない。自分の大切な人のために本を作りたい。その一心で1冊の本を作る。それが、以下の本だ。
「大切な人のために本を作る」。それは僕には「祈り」と同じ行為に思えてならなかった。心が震えた。心の奥底からの彼の声が僕には確かに聞こえた。
何年か前、あるイベントで彼の話を聞きに行ってきた。なんて素直な人なんだろう。そこにはこの本に書かれてある通り、生きるのが不器用で、けれど、とても人間的に深い人がいた。尊敬しているある方について話をされていた時、ふと涙を零した。こんなに純粋な人が作っている本は、きっととても素晴らしい本だろう。
こちらも読んでみたい。
以下、彼の出版社の本を数冊。